
シナモンは熱帯の海岸沿いの低地に生える、クスノキ科の常緑樹です。年に2回ある雨季に、幹からのびる若い枝を、つけ根から切って収穫します。枝の表面を薄く削ると、湿ったやわらかな樹皮が出てきます。これにまっすぐな切れ込みを入れ、刃をさし入れて、丁寧に樹皮をはがしていきます。長くはがれたものの内側に、小さめの樹皮をつめて巻き、すき間のないロールをつくります。これを自然に乾燥させます。
出来上がったシナモンスティックは、樹皮の厚さによってグレードがつけられます。薄いものがコンチネンタルと呼ばれ、最上です。シナモンパウダーは、スティックにするには大きさの足りなかったもの(フェザリング)や削りくず(チップ)から作ります。
シナモンは菓子やデザート、肉や野菜の料理に使われます。特にフルーツと相性が良く、アップルパイや洋ナシのコンポートには定番のスパイスです。バナナをバターでソテーして、ラム酒をたらしてシナモンをふれば、アイスクリームなどのデザートのつけあわせになります。シナモンティーにして飲んだり、コーヒーやチョコレートドリンクに入れたり、他のスパイスや柑橘類と一緒にホットワインに加えたりもします。アラビア人は、仔羊のシチューに使います。インドではガラムマサラなどのミックススパイスに使ったり、プラオ(ピラフ)に風味をつけたりします。
シナモンという言葉はギリシャ語に由来し、ギリシャ語はフェニキア人の言葉に起源があります。古代の海を航海していたフェニキア人は、アラブ人が支配していた隊商路の積み荷を運んでいたと言われており、歴史家ヘロドトスにこんな話を残しています。……シナモンは、大きな鳥がアラビアまで運んできて、断崖にある巣に運び込む。アラブ人が巣の近くに大きな動物の肉を置くと、鳥はそれを持ち帰るが、肉の重みで巣は壊れてしまう。そこでアラブ人は、ちらばったシナモンを拾い集める………。この時代、ヨーロッパではまだシナモンの生産地は知られていませんでした。遠い異国から運んでくる商人たちは、大げさな苦労話をして、商品の値段をつり上げたのかもしれません。
15〜16世紀、シナモンは探検家たちが探し求めた最初のスパイスでした。まずポルトガルがセイロン島(スリランカ)にたどり着き、奴隷を使ってシナモンの森を開拓しました。17世紀、オランダ人がセイロン島から彼らを追い出し、貿易の独占を始めます。18世紀末になると、イギリス人がそれにとってかわりました。この頃には世界的にも需要が増え、ジャワ島、インド、セーシェル諸島(インド洋)、ザンジバル(アフリカ東海岸沖)にも移植され、栽培されるようになっていました。