五能線で快速が止まる数少ない駅、深浦。乗り換えで2時間ほどここにいることになって、荷物もあるし、喫茶店で本でも読みたいなと考えながら、ふらふら町を歩いていました。喫茶店はなかったけれど、それよりずっとおもしろい場所を見つけました。
木造の駅舎を出て通りをわたると、そこには青い海が広がっていました。その海を左に眺めながら歩いていくと、やがて沖の方に、島のような大きな岩山が見えました。細い道が橋のように、浅瀬をぬうようにわたっています。その岩山まで、歩いて行けるようです。
近くまで来ると、それは砦のようにそびえていました。道はそのふちをなぞってゆるやかに曲がり、その先で行き止まりました。右手の岩壁にトンネルが掘られていました。中は狭く、急な階段がのぼっています。そこを抜けると、再び海が見えました。階段は上へと続いています。のぼり終えたと思ったとき、目の前の岩から、大きな白い鳥がふわりと舞い上がりました。そしてそのまま風に乗って、海へ飛んでいきました。
いつの間にか、高いところまでのぼっていました。風が顔と体に吹きつけています。頂上はなだらかで、草が少し生えていて、ベンチが海を向いて並んでいました。ごつごつした黒い岩場がせり出していて、そこに立つと、絶え間なくくだける白い波が見えました。岩礁のあいだで波が渦巻き、水はそこだけまっ白でした。
わたしは岩場に腰をおろしました。目の前に海が広がっています。それは初めて見る日本海でした。陰気だと聞いていた海は、五月の明るい日射しの下で、どこまでも青くさざめいています。この海の向こうに、ヨーロッパまで続く大陸があるのだと思いました。とどろくような波の音が、心地よく耳になじんでいました。
トンネルのところまで下りてくると、年配の家族がのぼってくるところでした。上はどんなふうだったかをきかれて、答えながら、わたしはさっきの景色をまた見ることがあるのかなと思いました。
今回の旅で、海のそばにいられるのも今日で終わり。明日は白神山地に行って、内陸の森を歩きます。

