バニラ valilla

マダガスカル産(1本600円~1000円)

 アイスクリームなど洋菓子の材料として知られるバニラは、サフランに次いで、世界で二番目に高価なスパイスです。熱帯の森林に育つラン科の植物で、太いつるを樹木にまきつけながら、15〜20メートルの高さにまで伸びていきます。その果実がスパイスになります。見た目が豆のさやのようであることから、スペイン人によってバニラvania(ラテン語でさやの意味)と名付けられました。

 このスパイスが高価なのは、栽培と加工にひどく手間がかかるためです。花が咲 いたら24時間以内に人の手で受粉させなければいけませんし、果実は熟すのに8〜9か月かかります。収穫したら、発酵・乾燥の作業を行います。キュアリングと呼ばれる作業です。

 まず果実を熱湯に浸すかオーブンに入れるかして、成長を停止させます。それを蒸し風呂に似た状態に置いて発酵させると、緑色が茶色に変化していきます。それから乾燥させ、カビなどの微生物がつかないようにします。昼間は天日干し、夜は毛布に包んで汗をかかせるという方法で、2〜3か月かかります。最後は箱の中で数か月貯蔵。ワインやチーズのように香りを熟成させるのです。

 スパイスとなったバニラは、ナイフの先で切り開くと、数千個の黒い粒(種)が入っています。生クリームやカスタードクリームに入れて香りをつけるほか、フルーツを煮るシロップに加えたり、チョコレートと組み合わせたりもします。料理では、エビやホタテなどのシーフード、鶏肉が相性のいい食材です。

 バニラには風味や香りの成分が、250〜500種類ほど含まれています。このうち、バニラ特有の香りを生む主成分を「バニリン」といいます。バニリン分子は植物の繊維などから科学的に作ることができ、安価な合成バニラとして様々な製品に使われています。天然のバニラからは、甘い香り以外に花やフルーツ、スモーキーな香りなどもしますが、これは他の成分によるもので、産地ごとのちがい(バニラの個性)を生み出しています。

 バニラの原産地は中央アメリカです。カカオやトウモロコシと同じように、原住民にとっては神様からの贈り物で、緑色の液を毒虫に刺された傷口に湿布したり、粉末にして内臓の病気に使ったり、樹脂とまぜて神殿を香りで満たしたりしていました。1600年代後期まで、この植物は森の中で野生の状態で生育していました。古い時代には、熟した実が割れて開き、香りが漂い出したときに、森で収穫したとい います。

 バニラの第二の故郷といわれるのは、マダガスカル島から800キロ東、インド洋に浮かぶレユニオン島です。大航海時代にヨーロッパに伝わり、人々の間に広まっていったバニラでしたが、長い間栽培はされませんでした。レユニオン島は、この植物にとって理想的な気候でした。原産地のように花粉を運ぶミツバチがいなかったので、最初は実をつけませんでしたが、島で人工的に受粉させる方法が発見されます。バニラの生産・輸出が始まり、栽培方法は近くの島々、世界へと広まっていきました。現在、世界のバニラの80パーセントはマダガスカル産です。日本でも福岡県久留米市などで、国産バニラが作られています。

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