
タイムはヨーロッパに広く分布するハーブで、石の多い丘陵地に自生し、日当たりのいい斜面でよく育ちます。地面をはうように茂り、たくさんの小枝に細かい葉をびっしりつけます。両手でこするように触ると、さわやかな香りがたちます。何百もの種類があり、香りはそれぞれわずかにちがいます。その中で、料理によく使われるのは、コモンタイムとレモンタイムです。
春には小枝から若葉をこそいで、料理の上にちらします。夏に向けて香りが強くなってからは香りの抽出にむくので、鍋に小枝のまま入れます。初夏、花の咲く直前が収穫に適した時期で、乾燥させると冬の間もその風味を保ちます。
タイムは野菜、肉、魚・・・と、あらゆる食材と相性の良いハーブです。熱を加えても香りがとばないので、長時間煮込む料理に適しています。ポトフなどの野菜スープ、牛肉を赤ワインで煮込んだシチューなどによく合います。イギリスではセージ(リンク)のように詰め物に使ったり、パイや野ウサギのシチューに入れたりします。殺菌効果もあり、ソーセージ、サラミ、パテ、塩漬け肉、ピクルスなどの保存食にも使われます。
古代ギリシャでは、「タイムの香りがする」というのは最高のほめ言葉でした。花は蜜が豊富なので、ミツバチの巣箱のまわりに大量に植えられました。中世の貴婦人たちは、スカーフに一枝のタイムとミツバチを刺しゅうして、馬上試合にのぞむ騎士に贈ったといいます。タイムは勇気や行動力の象徴と考えられていたからです。
一方、この植物は死と結びつけられた草でした。死者の魂はこの花の上で休むとされ、故人と語り合うときはその枝を身につけました。妖精が好む草としても知られ、タイムが一面に香りをたてているところは、妖精のお気に入りの場所と信じられていました。また、time(時間)と発音が同じことからたくさんの言葉遊びがあり、庭の日時計のまわりに植えられたりしました。