ミートソースを作ることにした。にんじん、玉ねぎ、セロリをみじん切りにして炒め、ひき肉とバターを加えて炒める。トマトの水煮とブイヨンを注いでひと煮立ちさせたら、スパイスを入れてコトコト煮込む。ローリエ1枚、クローブ2本、ナツメグはおろし金で削って入れ、タイムは……急いで庭からとってくる。仕上げに飾るパセリも一緒に。
タイムの葉を茎から外そうとして、思わず叫び声をあげた。葉っぱの間に、シャクトリムシ。でも本当に小さくて、小指の爪の先くらいしかない。色は透き通るような緑色。体をくっと曲げて、くっと伸ばす。もしかして、かわいいかもしれない。
ひき肉の入っていたパックを洗うと、その中に、シャクトリムシのいる枝先を置いた。パックのまん中の葉の塊が小さな島のようで、シャクトリムシはそこから降りられないでいた。後ろ足で立って背伸びをすると、右を向いたり、左を向いたり。わたしは花びんからラベンダーを1本とって、中に置いた。どこかちぐはぐで、ミヤコワスレの葉も置いてみる。それからコンロに戻って、しばらく料理にかかりきりになった。
パックのところに戻ったとき、シャクトリムシはタイムから降りて、パックの白い壁をのぼろうとしていた。そろそろ逃がしてあげようか。なんとなく、パセリの頭をちぎって、中に置いた。そして、ぎょっとした。パセリの中に、ひと回り大きいのが一匹。パセリの房を眺めてみると、そこにも一匹。チビのシャクトリムシが、ハーブを食べる害虫に見えた瞬間だった。
外に出て、道路のわきの雑草のところに、シャクトリムシを捨てた。ミートソー スの鍋をかき混ぜながら、何かがすごく残念だった。
