フェンネル fennel

フェンネルの葉

 フェンネルは地中海原産の多年生植物で、成長すると1.5メートルにもなります。葉は明るい緑色で、羽のようにふわふわした手触りです。夏に黄色い、傘のように広がった花をつけ、秋には楕円形の茶色がかった緑色の種(フェンネルシード)をつけます。ディルとは外見が似ていますが、近くに植えると交雑しやすく、互いの風味を損ねてしまうので注意が必要です。

 フェンネルの葉はさわやかで、心地よい香りがします。春にやわらかな葉をサラダやサンドイッチに入れると、見た目にもきれいです。葉はほのかに甘く、スープやフルーツサラダにちらしたり、デザートを飾ったりすることもできます。夏には香りが強くなるので、肉や魚をローストするときに使います。南フランスでは、一匹丸ごとの魚の身の中にフェンネルの茎を入れてグリルし、フェンネルを敷いた上に置いて、火のついたブランデーを注ぎます。フェンネルは燃え、焼いた魚にその香りがうつります。

 フェンネルの属名は「干し草」を表すラテン語に由来します。ポルトガル人はマディラ諸島を発見したとき、野生のフェンネルの香りの良さから、ポルトガル語のフンチョ(フェンネルの意味)からとって、上陸地にフンチャルと名付けました。古い時代から視力を高める効能も言われていて、生まれたばかりの子の目にフェンネル湯で洗う習慣もあったといいます。

フェンネルシード

 種はスパイスとして、ピクルスやマリネ、スープやパンに加えます。フランスのアルザス地方やドイツでは、ザワークラウト(キャベツの漬物)に入れ、イタリアにはこのスパイスを使った有名なサラミ、フィノッキオーナがあります。中国の五香粉、インドのマサラなどのミックススパイスにも使われていて、様々な料理に風味をつけます。インドでは消化を助けるために、砂糖をまぶしてカラフルにした種を食後に食べます。

 フェンネルシードは、古代ローマで剣闘士が、強くなるための食べ物として好んで食べ、スペインでも闘牛士が用いていました。空腹をまぎらわす効果でも知られ、清教徒時代のキリスト教徒は、断食の時期に種をかんで苦しみをやわらげていたといいます。イギリスではかつて魔よけの力が信じられていて、悪魔が安眠を邪魔しに来ないように、鍵穴に種子の粉末をつめたりしました。

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