ジュニパー juniper

ジュニパーベリー

 ジュニパー(和名、西洋ネズ)は、北半球のほとんどの場所で育つ低木の針葉樹です。ヒノキ科で唯一、食用の実(ジュニパーベリー)をつけます。黒紫色のなめらかな、えんどう豆ほどの小さな実で、するどいクギのような葉の間になるので、摘むのは危険な作業です。色づくのに2〜3年かかるため、緑色の実と熟した実が同じ木に同時に存在します。温帯で育つ数少ないスパイスです。

 ジュニパーベリーは、ジンの風味に欠かせない原料です。ジンは穀物から作るスピリッツ(蒸留酒)で、ジュニパーベリーを中心に、さまざまなボタニカル(草根木皮)を加えます。13世紀のフランドル地方(現在のベルギーとフランス北部にまたがる地域)が発祥とされ、その頃はイネーフェルjeneverと呼ばれていました。ジ ュニパーを意味するオランダ語です。それがイギリスに渡って英語のジュネヴァgenevaに変わり、どこかの時点で省略されてジンginになります。作り方も、独自に進化していきました。

 ジュニパーベリーは日本でも、乾燥した実をスパイス店で購入することができます。乳鉢などで簡単に砕くことができ、心地よい木のような香りを放ちます。口に入れるとほのかに甘く、松やにのような風味がして、苦い後味が残ります。

 北・中央ヨーロッパでは、肉やジビエ(狩猟された動物の肉)の調理に使われる人気のスパイスです。野性的な臭み、レバーやパテのくせ、豚肉や鴨肉の脂 っぽさをやわらげます。砕いたものを塩やにんにくと合わせてすりこんだり、丸のままマリネやピクルス、ドレッシングに加えたりします。スカンジナビア人は、牛肉や工ルク(大鹿)のマリネ、ローストポークの赤ワイン漬けに使います。肉に添えるジ ャムに入れるスパイスとしても定番です。ベルギーでは仔牛のキドニー(腎臓)と一緒にジンでフランベし、フランスのアルザス地方では、ザワークラフト(キャベ ツの漬物)に加えます。

 ジュニパーは古代から、あらゆる病気に効くと考えられてきました。古代エジプトでは、ジュニパーを乳香、クミン、ガチョウの脂と一緒にゆで、頭痛の治療に使 いました。アラブ人もジュニパーの木から樹脂をとり、歯の痛みをとるのに使いました。この植物は何世紀にもわたって万能薬として用いられ、自家製コーディアル(果実エキスやハーブなどから作る甘い飲み物)やリキュールに加えられてきました。14世紀に黒死病(ペスト)が到来すると、ヨーロッパの人々は特効薬としてこの植物にすがりました。当時ペストは、病気の有害な蒸気を吸い込むことで感染すると思い込まれており、消毒のためには火が一番とされていたので、盛大にかがり火がたかれました。この時燃やされたのが、ジュニパーとローズマリーでした。夜ベッドに入る時には、窓を閉めてジュニパーの枝を燃やし、煙と香りで部屋を満たしたという記録も残っています。

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