
パンダンはインドから東南アジア、北オーストラリア、太平洋の島々で見られるタコノキ科の木です。根が発達し、いくつも伸びる太い気根がタコの足に似ています。この木の幹のまわりに、光沢のある刀のよう葉がらせん状に成長します。湿気を好んでぐんぐん育ち、いつでも収穫することができます。
この葉をパンダンリーフと呼びます。刈りたての草の香り、花のような香りがし、バニラのような甘い風味を持っています。料理や菓子によく使われますが、葉そのものを食べることはなく、香りや色だけを利用します。
東南アジアでは、この葉で肉や魚、米やデザートを包んで焼いたり蒸したりします。タイの「パンダンチキン」は、鶏肉をパンダンリーフで包んで揚げた料理です。葉の香りがチキンにうつるだけでなく、肉の水分を閉じ込めてジューシーさを保ちます。スープやカレーに風味をつけたいときには、葉の表面をフォークなどで引っかいて、繊維がはがれないように軽く結んでから加えます。米を炊くときにこれを入れると、米粒がかすかに甘い香りになります。
東南アジアには、さまざまな緑色の菓子がありますが、これらはたいていパンダンの葉の汁で色づけられています。葉を煮出したりすりつぶしたりして色素を取り出し、それを菓子の生地に加えるのです。ラオスやマレーシアには、緑色に着色されたういろうのような蒸し菓子があります。ベトナムではグラデーションの美しいゼリーを作って、誕生日や結婚式に振舞います。シンガポールには、卵やココナッツミルクが材料のカヤ(Kaya)という淡い緑色のジャムがあります。朝食やおやつに、トーストにぬって食べるのが人気です。
これらの国々では、パンダンは市場で安く手に入るほか、村々で簡単に茂みを見つけることができます。パンダンウォーターを作って暑い日に飲むなど、生活の中で使われているハーブです。タイでは頭痛や筋肉痛の薬にしたり、ペーストにして頭皮をマッサージしたりします。台所に置いて、天然のゴキブリよけにすることもあります。ベトナムではタクシーの座席にパンダンの葉の束が置かれているのを見かけることがありますが、これは車内の空気をきれいに保つためです。インドでは多くの村々で、飲み水に良い香りをつけるため、井戸の中に落とし入れます。
パンダンは近年、ヨーロッパやアメリカでもその人気が高まっています。東南アジアを旅行する人たちが増え、アジア料理の人気も高まったことで、パンダンリーフはなじみのある入手可能な食材となっていったからです。このハーブの味と香りは、西欧の人々にとってエキゾチックに感じられ、ゴマやタピオカといった他のアジアの食材のように広まっています。イギリスのフードライターでもあるシェフ(Nigella Lawson)は、天然の着色料にもなるこのハーブを、「ヨーロッパにおける新しい抹茶になるだろう」と評価しています。